今日は川越の紀伊国屋へ行って私が好きな作家の本を見に行くことにしま
した。と言うのも今度出す本の内容をノンフィクションとして自分のこれ
まで体験して来たことを書くか、それとも作家のように自由な構想で小説
や物語風に書くのが良いのかをそろそろ決める時期になってきたからです。
紀伊国屋が終って、いつものように駅のすぐ近くのマクドナルドでコーヒ
ーを飲んでいたら、面白いカップルが私の近くの席にあらわれました。
この二人の年齢は40才を越えたあたりでしょうか。二人ともオーソドク
シーなスーツで決めて、ところがどこかへんちくりんな気品と上品さもあ
って、周りの客は一瞬でお店の雰囲気が変わったように思えたようで、み
んなでこの二人の様子を見ながらキョトンとしていました。
二人が席に座って最初にやりだしたのは、女性がウェットティッシュをバ
ックから取り出して、男性はそのことを予想していたかのように、まるで
お殿様のように目線を遠くにしたまま黙って両手を出して、そこから数分
間をかけた丁寧なお手拭き作業をやりはじめたのです。一本づつ指の先ま
で丁寧に。
周りの客は、やはりみんなキョトンとした目でこの様子を見ていました。
で、
男性はコーヒーを一口飲んで、また遠くを見る目線のまま、口をあける。
つかさず女性の方は、ポテトを一本つまんでお殿様の口に運ぶ。この繰り
返しを約5分間、まるで寸劇のようにコントのようにやりきったのです。
この間、お殿様はときどき髪を触ったり(女性の)自分のふとももを掻い
てみたりしただけでした。
私は何故か拍手をしてしまいました。が、周りはまだキョトンのままです。
私の隣の席でパソコンをやっていた若いビジネスマンも私と一緒に拍手を
やりだしました。
私とビジネスマンの拍手が終ったと同時に、殿様の女性がテーブルの汚れ
をウエットティッシュで静かに拭いて、まるで皇室の人間を真似たような
ふるまいをしながら、まわりに手をあげながら、みごとに立ち去りました。
今度は、私と若いビジネスマンとその隣のおばさんと3人で、立ち去る二
人に拍手をしました。で、そのおばさんがヒョコっと言ったのです。
「さんまの・・・アレアレ!キッコーマンのアレ!」
若いビジネスマンが答えるように言いました。
「しあわせって なんだっけ なんだっけ でしょ」
いつしか3人の体は同じように揺れ始めていました。
同じリズムでそれぞれの口の中で歌い出したのです。
何だか頭が混乱していたようだが、しあわせって、キッコウマンのこと
だったし、ポテトもそうだったようだ。
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