「マラリアになったら、タイに行け」
ベトナムや、カンボジアを旅行していて、バックパッカーの合言葉を知った。
「マラリアになったら、タイの病院に行け」
なんでも、日本の病院の医師はマラリアに関する知識がほとんどないので、日本の病院にかかると適切な治療を受けられずに手遅れで死ぬ、というのである。
マラリアには予防薬もあるけれども、最近は新種のマラリア蚊が出て来て、特効薬が効かないという噂も聞いた。私は地雷よりもマラリアの方が怖いくらいだった。
ヘイローでは、インフルエンザによる気管支炎のような健康トラブルが多いという。わかる。すごい埃なのだ。私はカンボジアにいる間中、スカーフを顔にぐるぐる巻きにしていた。赤い土埃が目や鼻に入る。赤い涙、鼻血のような鼻水が出る。さぞかし私の肺も赤く染まっていることだろうと思った。これを日常的に吸込んでいる状態で、ウィルスに感染して免疫力が下ればすぐに気管支炎になりそうだ。しかも、カンボジアの森は昼と夜とでは寒暖の差が激しく、夜は肌寒いほどであった。
私はカンボジアで、目に埃が入り結膜炎になりそうになった。そこで、薬局に行って目薬を買ったところ、サルファ剤の入った真っ青な目薬をすすめられた。日本でサルファ剤が入った目薬はたいてい赤いので、なぜ青いのかぎょっとした。しかも、顔に色がついてしまうほど青いのである。
ちなみに、こんなに埃っぽいのに、カンボジアの人たちは「目薬なんか使ったことない。誰も使わない」と言っていた。
そうだろうなあ。ああ、軟弱な私。
ヘイローの宿舎に泊めてもらう。私たちは扇風機つきのベッド。当然、外国からのゲストだから。粗末だけどシャワーもあった。
でも撤去作業をしている作業員たちは、宿舎にごろ寝。仕切りもないだだっぴろい部屋にゴザのような布団をずらっと敷き詰めてぎゅうぎゅうの状態で寝る。身体も、巨大な蚊が浮いている貯め水を使って洗う。
私は暑さにうんざりして、歩いただけでへばっていた。
彼らは仕事を終えて帰って来てから、みんなでバレーボールをして遊んでいた。私よりずっと彼らの方が楽しそうだった。なぜだろう……。
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救急医療のチーフに話を聞く。現場での事故は今のところまだゼロだが、暑さからくる疲労で風邪をひいたり、インフルエンザになったり、また、蚊に刺されてマラリアになったりと病気になる人は大勢いる。それらをサポートし、さらに、隊員たちに応急処置などの講習をする。医療スタッフも大忙しの日々。 |
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