「カンボジアは水の都だった」
ホーチミンシティからシェムリアップへ。
初めて見るカンボジアの大地は水びたしだった。
「なんだかカンボジアって、びしょ濡れだね。どこもかしこも濡れているね」
窓に下に広がるエメラルドの森も、赤い土も、ぜんぶ水びだし。カンボジアはまだ雨期が始まったばかりだというのに……。
「カンボジアって、水の都なんだね」
それが私のカンボジアの第一印象だった。水の国、カンボジア。
大地を覆う水のヴェールは、空を映して青く美しかった。
「実はアンコール・ワットも治水目的を含んだ水の王宮なんですよ」
と、筑摩書房の鶴見さんが教えてくれる。さすがに編集者、ちゃんと予習している。
なんでも、アンコール・ワットには水の神「ナーガ」が祀られているのだという。ナーガは祀神の一つで、水はすべての命の源とされているらしい。
遠く、メコン河が見えた。
雨とメコンの水と、赤い土がたくさんの作物を育んできたのだろう。豊かな土地なのだ。
お米もいっぱい収穫できたのだろう。この国は完全自給できる。
自給率30%の日本とはえらい違いだ。
だけど、いま、この大地には地雷がたくさん埋まっている。だから、多くの土地が農地として使えないと聞いた。
地雷が埋まってるのかなあ。それは空からはわからない。
夕日を浴びて、カンボジアの大地は神様の祝福を受けているみたいに、すごくきれいで、輝いていた。
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