「わからなくても真面目に」
いよいよカンボジアで、地雷撤去の取材が始まる。
前夜のミーティングで神戸元気村の吉村さんから教育的指導が入る。
「ヘイローのスタッフは本気で危険な地雷撤去に取り組んでいます。非常に忙しい分刻みのスケジュールのなか、時間をとってもらっています。くれぐれも失礼のないように。真面目にレクチャーを受けてほしい。また、何をしに来たのかわからないような服装はやめてください」
げげげ、と思う。服装?
「たとえば、私が今着ている、ボーダーの水色のシャツとかダメなんですか?」
「うううむ。まあ、その程度ならいいかな」
とは言いつつダメそう。
「地味な方がいいんです。白とか黒なら問題ないです」
女性スタッフは皆、不安な表情になる。
「ノースリーブなんかは、絶対にやめてくださいね!」
ヘイローって軍隊みたいなところなんだなあ、なんかもう行くのが憂鬱になってくる。もちろん白のTシャツは持ってきているが……。かつて高校時代に服装指導の教諭からいつも呼び出しをくらって「お前のセーターは派手すぎる」と怒られていたことを思い出す。
あの頃の私は反抗的だったが、いまは「郷に入れば郷に従え」のオバさんだ。
ただし、集団行動と規律が嫌いな点は40歳になっても変っていない。
ムダなところで反目せずに、別の形で有効に自己主張するようになってはいるが、人間の本質なんて、そう変るものじゃない。
「説明は英語です。あちらは真剣に説明してくれます。もし、英語がわからなくても真面目に真剣に聞いてください。そして後で質問してください」
英語が苦手な私には、これまた耳が痛い〜。
山田さんが隣でぼそりと「ワシが一人で、笑いをとったる」と呟いた。
あははは、山田さんも「規律」とか「しゃくし定規」とか「団体行動」が嫌いなんだよな、きっと。
だんだん明日が不安になる。私は男社会が苦手だ。トイレも借りにくいし。
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